せしかを知らないであろう。余は何等かの形にて汝のまわりにたぶん居るであろう。しかし余は汝が見るのを忘れている処のものにおいてただおるのである』と
「それ等の強迫状から私はこの旅行でも彼は私にかげのようについておるらしく思われます。そして霊宝を盗もうとしまたはそれを持ってるために私に何か災いをしようとしてます。しかし私は一度もその人間を見た事がありませんから、彼は私が出会う何人かであるかもしれませんよ。理論的に話して、彼は卓子《テーブル》において私に世話をする給仕人の誰かであるかもしれません。彼は卓子《テーブル》に私と一緒にかける船客の中の何誰《どなた》かであるかもしれません」
「彼はわしかもしれんな」と機嫌のいいさげすみを持って、師父は言った。
「彼は他の何人かであるかもしれません」とスメールはまじめに答えた。「あなたは私が敵でないとたしかに感ずる唯一の方です」
 師父ブラウンは再び当惑して彼を見た。それから微笑して言った、「さてさて、全く奇妙じゃ、わしではないかな。わしが考えねばならん事は彼がほんとにここに居るかどうかを見出す何等かの機会じゃな――彼が彼自身を不愉快にする前にな」

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