事の出来る唯一の方法は、私が洞穴で見つけた十字架を――私が手ばなす事であるという事を話していました。彼は物好きの蒐集家の持つ熱情以外には何んの熱情も持たぬようでした。その事が彼は西方の人間であって東洋人ではないとたしかに私に感じさせた事の一つでした。しかしこの特別な好奇心は全く彼を狂気《きちがい》にさせるようでした。
「それからまだ不たしかではあったのですが、サセックスの塋穴におけるミイラにされた死骸の上に見つけられた双《ふたつ》の霊宝について、報知が来ました。もし彼が前に狂人であったのなら、この知らせは彼を悪魔につかれた人間に代えました。彼等の一つが地の人間のものであるという事は非常にいやな事でありました。彼の狂気《きちがい》のたよりは厚くそして毒矢の雨のように迅速に来始めました。そしてそのたびに私のけがれた塋穴の十字架に向ってさしのべた瞬間に私の死が私を襲うであろうという事を、前よりも更に断然と叫んで来ました。
「『汝は決して吾《われ》を知らないであろう』と彼は書いて来ました。『汝は決して吾が名をよばないであろう。汝は決して余の顔を見ないであろう、汝は死すであろうが決して誰が汝を殺
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