いつ頃から……ジルベールが……始めたのです?』
『いつと明確《はっきり》申上げかねますが、ジルベールは――やはり本名を申すよりこの名の方がよろしゅうございます――ジルベールは幼少の自分は愛嬌のある可愛らしい子供でしたが、ただ勉強が嫌いでなかなか強情張りでした。家に置きますと我侭も増長致しますから、十五の時に巴里《パリー》から少し離れた郊外にある中学校の寄宿舎に入れましたが二年と経たない内に退学されて参りました』
『なぜです?』
『品行が悪いんです。学校の方で調べた処によりますと、夜寄宿舎を抜け出たり、あるいは数週間も学校に帰らないで、家事上の都合で家《うち》に帰っていたなどと言訳をしていたそうでございます』
『何をしあるいていたんのでしょう』
『遊びあるいていたのです、競馬場へ入ったり、珈琲店《カッフェ》や舞踏場《おどりごや》へ入り浸っていたのです』
『そんなに金を持っていたのですか?』
『ええ』
『だれから貰っていたのです?』
『ある一人の悪漢が、親に内緒で金を貢いで、学校を抜け出させて、段々と堕落させる様に仕向け、嘘を吐くこと、金を遣うこと、盗みをすることなどを教わったのでございま
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