かなあ。』
『フフン。これですか。どうも仕方が無いでしょうなあ、こんな物は……』
 ニコル氏はフト思い出した様に、
『閣下、ナポレオン一世の在位の頃に地位名望を得てその没後振わなくなった、ある貴族の子孫に当るものはございませんでしょうか。――ナポレオン党の領袖でしたでしょうが……これはその人のではなかろうかと存じます。と申しますのはこの破片にはどうやらナポレオンの半面像がありますからなあ……と申上げれば名前を申上げずとも御解りでしょうが……』
『アルブュフェクス侯爵……』とプラスビイユが呟いた。
『そうです、アルブュフェクス侯爵です……』
 彼――ニコルは官房主事に向い至急にアルブュフェクス侯爵に関する詳細な調査を依頼すると同時に、彼自身侯爵の行動を一々探偵した。
 苦心に苦心を重ね、十数日を費やした結果、――ニコルすなわちルパンは侯爵がたびたびアミアンとモントピエールの間に量に出掛ける事を知った。そう云えばその附近にかつては侯爵の居城で、今は廃墟となっている通称モンモールの古城と云うのがあった。彼はこれに目を付けた。
『ドーブレクの幽閉されているのはそこだ』とルパンは叫んだ。
 古城
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