いましょう。」
「それ、その机の上です。」
 ボートルレは飛び上った。あるある!小さな本が卓子《テーブル》の上にある。
「ああ、ありましたね。」と博士も叫ぶ。
 二人は一生懸命に読み始めた。暗号の解き方が書いてある。しかし途中で何だか分らなくなってしまった。暗号の解き方ならボートルレがもはや考えたことである。
 少年はどうすればいいか分らなくなった。
「どうしたんです!」と博士は聞いた。
「分らなくなりました。」
「なるほど、分らない。」
「畜生、しまった!」といきなりボートルレが呶鳴った。
「どうしたんです!」
「破ってある!途中の二|頁《ページ》だけ破ってある、ごらんなさい。跡がある……」
 少年はがっかりしてしまった。そして口惜しさにその身体はわなわなと慄えている。
 誰か忍び込んでこの本を探し、その大事な二|頁《ページ》だけを※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》り取ったものである。男爵も博士も驚いてしまった。
「娘が知っているかもしれません。」といって男爵は令嬢を呼んだ。令嬢は不幸《ふしあわせ》な人で夫が亡くなったので一人の子供を連れて、父親である男爵の邸へ来
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