ているのである。
夫人は昨晩その本を読んだのであった。が、その時は裂かれているところなどはなかったということである。それでは裂かれたのは今日である。邸の中は大騒ぎとなった。しかしその二|頁《ページ》の行方は分らない。ボートルレはあきらめた。少年は夫人に尋ねた。
「あなたは、この本をお読みになったのなら、裂かれた二|頁《ページ》もお存じでいらっしゃいましょう。」
「ええ。」
「ではどうぞ、その二|頁《ページ》のところを私にお話し下さい。」
「え、よろしゅうございます。その二|頁《ページ》はたいへん面白いと思って読みました。それは本当に珍しいことで……」
「それです。それが一番大切なことです。エイギュイユ・クリューズは何でしょう。早くどうぞお話し下さい。」
「思ったよりも簡単なことです。それは……」
夫人が話し出そうとする時、一人の下男が手紙を持ってきた。夫人は怪しみながらそれを開くと、
「黙れ!そうでないとあなたの子供は起《た》つことが出来なくなるだろう。」
「ああ、子供は……子供は……」と夫人は驚きの余り、ただそういうだけで子供を助けに行くことも出来ない。
「嚇《おどか》されてはい
前へ
次へ
全125ページ中94ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ルブラン モーリス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング