という言葉も、またレイモンド嬢やシュザンヌ嬢のことをいっているのではなかった。なぜなら、その紙片《かみきれ》はもっとずっと前に出来たものであったから。
万事はやり直しだ。
エイギュイユの秘密を書いてある本が、ルイ十四世の時に出来て、それはまもなく焼き捨てられた。ただ二冊だけ残っている。一冊は例の大尉が盗み出した。また一冊はルイ十四世の御手《おんて》に残り、ルイ十五世に伝わり、十六世の時に獄屋の中で焼き捨てられた。しかしその写しの紙片《かみきれ》が女王に渡された。女王はそれを聖書の中に挟まれた。
少年はその聖書の行方を尋ねた。聖書は博物館の中に蔵《しま》われてあった。
ボートルレはその博物館へ行き、見せてくれるように頼んだ。博物館長はすぐに許してくれた。聖書はあった。中に紙片《かみきれ》もあった。それには何か書いてある。少年は慄える手でその紙片《かみきれ》をとり出して読み始めた。
「これを我が王子に伝う。 マリー・アントワネット。」
読み終らぬうちに、あっと一声少年は驚きの声を上げた。女王の御名《おんな》の下にさらに……黒インキで、アルセーヌ・ルパンと書いてある。
アルセ
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