当った。
 そして二百年以上経った今、ボートルレ少年はその策略に掛ったのである。
 なおまた博士はいっている。きっとこのエイギュイユの秘密をかのルパンは知っているのであろう。そしてまたボートルレ少年の考えを欺くために、エイギュイユ城を借りていたものであろう。仏蘭西《フランス》国家の一大秘密を知っているのは、きっとルパンただ一人であるに違いない。
 祝の会場は大騒ぎになった。ボートルレ少年は新聞の中ほどからもう自分では読むことが出来なかった。少年は自分の負けであったことをはっきりと知った。少年は両手で顔を覆うて沈み切ってしまった。
 バルメラ男爵は傍《かたわら》に立って、静かに少年の手をとってその頭を上げさせた。
 ボートルレは泣いていた。

            火中から拾い出された本

 ボートルレ少年は学校へ帰ろうともしなかった。ルパンに勝てないうちは学校へも帰るまいと決心した。少年は一生懸命に考え始めた。
 あの紙片《かみきれ》の暗号はみんな自分の考え違いであった。エイギュイユ・クリューズはあのクリューズ県に聳え立っているエイギュイユ城ではなかった。同じく「令嬢《ドモアゼル》」
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