そして一冊の本の暗号を写した一枚の紙片《かみきれ》を四つ折りにして封をし、それをその士官に渡された。そしてその一冊の本は焼き捨ててしまわれた。
その士官は、ルイ十六世が断頭台にのぼせられてお亡くなりになった後、その紙片《かみきれ》を女王マリー・アントワネットにお渡《わたし》した。しかしその時はもはやその巨万の宝物《ほうもつ》は何にもならなかった。女王は「遅かった。」とかすかに呟かれた。そしてその紙片《かみきれ》を読んでいられた聖書の表書《ひょうし》と覆いの間に隠された。そして女王もまもなくまた断頭台の上で亡くなられた。
その後になって、クリューズ河のほとりで針のように尖った屋根のある城が発見せられた。それはエイギュイユ城という名であった。そしてその城はあの百冊の本を焼かれたルイ十四世が命令して築かれたものであった。このことをよく考え合せてみると、ルイ十四世は国家の大秘密が知れ渡ることを気づかわれて、エイギュイユという城をつくって、エイギュイユ・クリューズ[#「クリューズ」は底本では「クリーュズ」]の秘密はこの城であるかのように見せかけようと思われたのであった。王のこの策略は見事に
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