、仲間の者に知らせてやったのもレイモンド嬢であった。例の皮帽子をとり替えてやったのもレイモンド嬢である。ボートルレをわざと怪しく思わせるために、その前の日にボートルレを小門の前で見たといったのも、やはりレイモンド嬢の考えた偽であった。しかしこの偽のために、ボートルレはレイモンド嬢を怪しいと思い初めるようになったのだった。
 こうして四十日も掛って、レイモンド嬢はルパンを全快させた。ルパンが死んだら、レイモンド嬢に仇討をするという脅迫の紙切は、やはりレイモンド嬢が考えて書かせたものであった。
 ジェーブル伯邸で起った事件の不思議な一つ、傷ついたルパンがどうしても発見されなかったわけがこれで分った。ルパンはやはり僧院の中にあって、レイモンド嬢の親切な看病を受けて全快したのである。
 それでは何故《なにゆえ》にレイモンド嬢を誘拐したのであろうか? 四十日の間レイモンド嬢の優しい看病を受けたルパンは、レイモンド嬢と結婚したいという望みを持つようになった。しかしレイモンド嬢は、ルパンの傷が治っていくごとに、土窖の中へ訪ねてくるのが少なくなった。ルパンの傷がすっかり[#「すっかり」は底本では「すっ
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