きらめたが、彼は早口にドバルを殺したのは伯爵で、自分ではないことをレイモンド嬢にうったえた。レイモンド嬢は同情深い人だったので、初めドバルの仇討《あだうち》をしようと思って銃を撃ったのがドバルの殺害者ではないと分ると、その倒れている男が可哀想になった、すぐルパンの傷口にハンカチを割いて繃帯をしてやり、ルパンの持っていた僧院の鍵で、僧院の扉を開け、ルパンを中へ入れてやって、そして知らない風をして下男たちと他を探し廻っているうちに、ルパンは隠れ穴の土窖の中へ隠れてしまった。それであとになってから僧院の中を探した時には、もうルパンの姿は見つからなかった。
レイモンド嬢は自分の隠してやった賊を、そのまま放っておいたら飢死《うえじに》をしてしまうだろうということが心配になった。そして彼女はどうにも仕方がなく、それから毎日食事や薬を僧院の隠れ穴へ運んでやるようになったのである。
思い掛けなく賊の味方をするようになったレイモンド嬢は、判事の取調べの時にも偽《いつわり》をいってしまった。二人の令嬢が犯人の人相のことで、違ったことをいったのがこれで分る。ルパンの傷が重いから手術をしなければならないと
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