から」]治ってしまったら、もうレイモンド嬢に逢うことは出来なくなるであろう。
それでとうとうルパンは土窖の中を出ると、種々《いろいろ》の仕度をととのえて、レイモンド嬢を誘拐してしまったのであった。
しかし誘拐しただけではレイモンド嬢を探し出そうとするに違いないと思ったルパンは、レイモンド嬢は死んでしまったように思わせなければならない。
また一方ルパンも死んでしまったように思わせるために、僧院の土窖の中へ死体をおいた。そしてその死体はちょうど大石が落ち込む下のところにおき、その頭は大石の下になって人相が分らないようにくだけてしまうような仕掛けになっていた。それと同時に海岸にはレイモンド嬢の死体が打ち上げられた。その死体も同じように人相は見分けられないほど腐っていた。ただ腕輪がレイモンド嬢のであったから、レイモンド嬢の死体だろうと思われたのであった。
この二つの事件からボートルレは考えついたことがあった。それはちょうどその四五日前に、ある宿屋に泊っていた若い夫婦が毒を飲んで死んだことが新聞に出ていた。そしてその二人の死体は、親類の者だという者が出てきて引き取っていったのであった。い
前へ
次へ
全125ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ルブラン モーリス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング