絵を見て驚いた。世界に名高い名画ばかりである。それはみんな偽物とおき代えて、ルパンがここへ持ってきた物ばかりなのだ。
「いつかは偽物ということが分るだろう。それらの偽物の絵の裏には、我輩の名前が書き入れてある。これがジェーブル伯爵邸にあった四枚の名画だ。」
扉を打ち破る音が巌の中に響く。
「喧しくてたまらん。上へ行こう。」
そこは美しい織物の室である。次は時計の室、書物の室、目まぐるしいほどの宝物《ほうもつ》ばかり積まれてある。これらの物はみんなおおかたルパンが集めた物であった。のぼるにつれて室はだんだん狭くなっていく。
「これがお終いの部屋だ。」とルパンがいった。そこはもう余り高くて誰も覗くものはないので、ちゃんと窓がこしらえてある。日の光が室いっぱい差し込んでいる。その室には王様の金の冠や、世界に二つとない宝石や、実に立派な物ばかりであった。下の音が少しずつ近くなってくる。窓から見ると漁船が盛んに活動している。水雷艇の影も見える。
少年は口を開いて、
「それでは仏王に伝わった宝物《ほうもつ》は?」
「ああ、君はそれが知りたいんだね。」
と、いって足をあげて床をどんと蹴る。する
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