と床の一部が跳ね返った。それを引き上げると穴がある、中は空虚《から》だ。またどんと蹴る。穴がある。空虚《から》だ。そして三番目もまた空虚《から》であった。

            怪侠盗の真面目《しんめんぼく》

 ルパンは嘲笑うように、
「へん、成ってやしない。もとはこの穴は空虚《から》じゃなかったんだ。ルイ十四世とルイ十五世の時、とうとうこの宝物《ほうもつ》を費《つか》っちゃったんだよ。しかし第六番目は空虚《から》じゃない。ここはまだ誰も手をつけていない。見たまえ!ボートルレ君。」
 と、いいながらルパンは身を屈めて蓋を持ち上げた。穴の中に金庫がある。その金庫をルパンは鍵で開けた。
 見ると目もくらむかと思う、宝石、青い玉、紅い玉、緑色の玉、金色の玉……。
「[#「「」は底本では欠落]見たまえこの宝玉を!みんな女王たちの持ち物であったものだ。しかしボートルレ君、我がアルセーヌ・ルパンは決してこの宝石に手をつけなかった。これは仏蘭西《フランス》王家の宝物《ほうもつ》だ。これは国宝だ。我輩は決してこれを自分の物にはしなかった。」
 階下ではガニマールが急ぎに急いでいる。叩く音が近くに
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