ちゃんと閂《かんぬき》まで掛けておきました、」ルパンは立ち上った。そして何事か夫人に耳打ちして、給仕と一緒にあのカーテンの影から、夫人を出ていかせた。
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 下の方の音は次第に大きくなってくる。ボートルレは心の中で、「ガニマールがとうとう待ち切れずにのぼってきたな。」と思った。ルパンは平気に落ちつき払って、下の騒ぎなど聞えないか[#「聞えないか」は底本では「聞えなかい」]のように語りつづけた。
「我輩がこの城を発見した時は、そりゃ荒れ果てて、とてもひどかったのだよ。それを修繕するのにはずいぶん骨が折れたよ。」
 叩く音は次第に激しくなった。ガニマールは第一の扉を打ち破り、第二の扉に掛ったらしい。それがしばらくして止むと、いっそう近くでまた叩き始めた。今度は第三の扉だ。もはやあと二つしか残っていない。
「実に喧《やかま》しい!」とルパンが叫んだ。「さあ、上にのぼろうじゃないか。エイギュイユ城の見物も面白いよ。」
 二人は上へのぼった。その室にも扉がある。ルパンは扉に閂を掛けて、
「これは我輩の絵画陳列室だ。」
 壁という壁は絵で覆われている。ボートルレはその
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