その返事を待つ間、少年は令嬢室《ドモアゼルむろ》で二夜をすごした。それは実に恐ろしかった。今にも誰か来て自分を刺し殺すんではないだろうかと。
 初めの夜は何事もなかった。次の夜のことである。少年はじっと身を堅くした。例の煉瓦の扉が音もなく開いて、その闇の中から黒い影が現われた。少年は数えた、三人、四人、五人……
 五人の男はそれぞれ大きな荷物を抱えていた。彼らはルアーブルの方へ行く道を進んでいった。まもなく向うで自動車に乗ったらしく、音がしてそれが遠去《とおざ》かっていく。少年は洞穴《ほらあな》を出てこれを見届けたが、引き返そうとしてはっとして樹蔭《こかげ》に隠れた。またも五人の男が荷物を持って出てきた。そしてやはり自動車で走り去った。
 少年は[#「少年は」は底本では「年少は」]恐ろしくなったのでその夜は宿へ帰った。翌朝《よくちょう》ガニマール探偵がやってきた。少年は大喜びで探偵を迎えた。ガニマールは少年のこれまでの働きを褒めた。
 二人はルパンを捕えることを相談した。ガニマールは奇巌城の中へ突撃して、もしルパンがその中にいなかったら、いつか来た時を見張っていて捕まえようといっ
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