、その馬方が声を掛けた。
「ボートルレさんでしょう、変装していても分りますよ。」という。どうやらその男も変装しているらしい。
「あなたはどなたです。」
「分りませんかね、私はショルムスです。」
ああ英国の名探偵ショルムス!ここで逢うということは何という珍しいことであろう。しかしショルムスは少年よりも先に秘密を握ったのではないだろうか。探偵は少年のその顔色を見て、
「いや、心配なさらんでもいい、私のはエイギュイユの秘密のことではない。私のはルパンの乳母のヴィクトワールのいる場所が分ったので、そこでルパンを捕まえようというつもりなんです。」なお探偵はいった。「私とルパンとが顔を突き合せる日には、その時こそどちらかに悲劇が起らないではすまないでしょう?。」
探偵はルパンに深い恨みを持っている。ルパンとの闘いに、ショルムスは死ぬ覚悟を持っているのだ。二人は別れた。
ああ奇巌城
ある日、少年は景色の好い海岸を歩いていた。少年はごつごつした巌《いわ》の上を通ったり、谷を通ったりして岬の方へ進んだ。余り景色が美しいので、ルパンのことも、エイギュイユ・クリューズの秘密
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