がるのである。その水を出そうとして、いまほっているのだ。井戸ほりが、いちばん先に、まいってしまいそうだ。
「元気を出せ。十六人の命の水だ。今じきに、蒸溜水を飲ませるから」
こんな場合、百千のことばではげますよりも、一さじの蒸溜水の方が、どんなにききめがあるか、よくわかっている。早く蒸潜水を、ごくごく飲ませてやりたい。しかし、蒸溜水は、そう、たやすくはできない。
島を、大いそぎで一まわりしてきた、漁業長と小笠原《おがさわら》ら、斥候《せっこう》の報告は、
「島の面積は、四千坪(約百三十二アール)ぐらいです。北の方に、一町(約百十メートル)も砂浜つづきの、小さな出島があります。出島は、三百坪(約十アール)もありましょうか。そこには、ヘヤシール(小型のアザラシ)が、三十頭ぐらい、ごろごろしていました。おどろかさないように、そばへは行きませんでした。
流木が、二本あります。二十年ぐらいも前に難破した船の、マストらしい、アメリカ松で、縦に、たくさん干割《ひわれ》があります。正覚坊の大きいのが四頭、これは、あおむけにしてきました。ほかに、何もありません」
「ごくろう。大いそぎで、蒸溜水つく
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