なびくもののようなものを見つけた。
「あれっ」
「煙か」
「島か」
「あたった。うんと漕げっ」
数人が、同時にさけんだ。みんな立ちあがった。「あたった」というのは、めざす島が見えたとか、島に着いたとかいう、漁夫たちのことばだ。
見つけたのは、白い砂の、ひくい島。水面上の高さは、ほんの一メートルぐらい。
草一本もない。周囲は、百メートルもあろうか。とても小さい島である。
ざくり。伝馬船が白砂の浜にぶつかって、ひらり、ひらり、みんなが島に飛びあがったのは、太陽のようすでは、正午ごろであったろう。
島にあがると、日ざかりの南の海の光線は、急に肌に熱くなった。
まず、島についたお祝いだといって、たいせつなくだもののかんづめ一個をあけた。十六人に、かんづめ一個である。のどがかわいて、ひからびた口に、ほんの一なめだ。しかし、すこし酸味があって、どうにか、かわきは止った。みんなは、これでまんぞくした。これから何年も、無人島生活をはじめるのである。一なめのくだもののかんづめも、たいへんなごちそうだ。
島のまわりをぐるりとまわってみた。なにしろ、小さな、はげた砂の島。草一本もない。また、な
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