に一つ流れついていない島だ。これでは住めない。一同は、顔を出見合わせた。
「島が見える」
 さけんだ者がある。指さす方の水平線に、はるかに、いま立っている島よりも、三、四倍も大きそうな島。青々と草のはえた、海鳥の飛んでいる島が見える。といっても、白っぽい水平線に、きゅうりのうすい皮をはりつけたように見えるだけだ。
「しめたっ」
「それ、あの島だ」
 元気の出た一同は、伝馬船に飛びのり、たちまちめざす島に漕ぎよせた。
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  2


   みんな、はだかになれ

 その島にあがると、緑したたる草が、いちめんにしげっている。しかし、木は一本も生えていない。高いところは、水面から四メートルぐらい。平均の高さ、二メートルぐらいの、珊瑚礁《さんごしょう》の小島である。海鳥の群が、上陸してきたわれわれのすがたにおどろいて、ぎゃあぎゃあ、頭の上を、みだれ飛んでいる。
「いい島だなあ」
「どうだい、このやわらかい、青い草。りっぱなじゅうたんだなあ」
「ほんとだ、ぜいたくな住まいだ」
「島は、動かないや。はははは」
 みんなひさしぶりの上陸にうれしくて、かってなことをいっている。しかし、仕
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