と、手まねきをすると、まず運転士が、私の引く索につれて、やって来た。そして、水夫長と、元気な会員の川口と、泳ぎの達者な帰化人の父島《ちちじま》が、つぎつぎに船にやって来た。そして、手近なうく物を海へ投げこむと、ざあっ、と岩の方へ流れて行く。岩の方では、それを待ちかまえて、一つ一つひろいあげ、波にさらわれないように、 岩のまんなかに運ぶのが見える。うく物は、索道ではこぶ必要がないのである。
食糧品をだそうとしたが、船底にちかい糧食庫は、すでに海水がいっぱいになってしまって、はいっていけない。料理室に、米が一俵あった。これは、料理当番にあたった者が、前の晩、朝飯の用意に、下からかつぎ出しておいたものだ。そこで、これをぬらさずに、岩におくる方法を考えた。
米俵のまま、二枚の毛布につつみ、その上を、雨合羽《あまがっぱ》でよく包んで、大きな木の米びつにいれてしっかりふたをした。またその上を、防水の油をぬってある、帆布《ほぬの》でつつみ、しっかりと索でしばって海に投げこむと、うまいぐあいに岩にとどいて、米はぬれなかった。
つぎに、ぬれ米を一俵さがしだした。入れて流す箱がない。そこで、俵が破れ
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