ぬよう、帆布でつつんで索でしばり、これに、石油の空缶《あきかん》二個をしばりつけ、空缶の口には、ぼろきれの栓をした。空缶は、俵のうきである。うまく岩にとどきますようにと念じて、海に投げこむと、これもぐあいよく、すうっと岩にとどいた。これで、石油缶二個は、ぬれ米一俵をうかす力があることが、わかった。
船にいる私たち五人は、いさみたった。
「よし、石油缶をあつめろ」
と、石油缶を、方々からあつめた。船には、かめやふかの油を入れるため、石油缶がたくさんあるのだ。
いろいろの物を、石油缶にしばりつけては、海に投げこんで、岩に送った。井戸掘道具の、つるはし、シャベル。それから、のこぎり、釜《かま》、双眼鏡、毛布類、帆と帆布。索をたくさん、料理室に出してあった食糧品などは、石油缶が、みんな岩に送ってくれた。
しかし、品物がとちゅうで落ちて、石油缶だけがいきおいよく岩についたものもあった。斧《おの》、鍋《なべ》などが、そうだった。いずれも島生活には、なくてはならぬ品なので、みんな、じつにがっかりした。
糧食庫の水をもぐって、もぐりのとくいな父島が、かんづめの木箱をひき出した。あまいものがす
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