ちあがって、ポンプやタンクにかよっているパイプは、船底を岩がぶちやぶってもちあげたために、甲板から、飛び出してしまった。それと同時に、動かなくなった船に、大波の最初の体あたり。
 どうん、ざぶりっ。
 海水の大山が、甲板にくずれ落ち、うちあたる大力にまかせて、手あたりしだいに、なにかをうちこわして、滝のように甲板からあふれだす。そして、こわしたものを、残らずさらって行く。らんぼうな大波は、のべつにうちこんでくる。
 予備錨の用意も、もうだめだ。ついに、パール・エンド・ハーミーズの暗礁の一つにうちあげられて、船の運命はきまったのだ。それは、夜明けもまだ遠い、午前二時ごろであった。

   待ち遠しい夜明け

 われらの龍睡丸《りゅうすいまる》は、暗礁《あんしょう》にうちあげられてしまった。しかし、岩が船底にくいこみ、船首が波の方に向いているので、すぐに船体がくだけて沈没するようなことはあるまい。もともと船は、船首で波をおしわけて進むので、船首は、波切りをよく、とくに丈夫につくられてあるものだ。
 それでまず、夜の明けるまでは、持ちこたえられる見こみがあった。これがもし、船が横から波におそ
前へ 次へ
全212ページ中50ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング