われる向きになっていたら、すぐにも、くだけてしまったであろう。
私は、まっくらやみの甲板に、乗組員一同を集めて申しわたした。
「こんな場合の覚悟は、日ごろから、じゅうぶんにできているはずだ。この真のやみに、岩にくだけてくるう大波の中を、およいで上陸するのは、むだに命をすてることだ。夜が明けたら上陸する。あと三時間ほどのしんぼうだ。この間に、これからさき、五年、十年の無人島生活に必要だとおもう品々を、めいめいで、なんでも集めておけ」
波を、頭からかぶりながら、甲板にがんばって、これだけのことをいった。そして、大声で号令した。
「漁夫四人は、漁船をまもれ。しっかりしばれ。波に取られてはだめだぞ」
「水夫四人は、伝馬船《てんません》をまもれ。命とたのむは、伝馬船だ。水夫長は、伝馬船をまもってくれ」
「漁業長。安全に上陸ができても、この波のぐあいでは、とても、食糧品をじゅうぶんには運べまい。漁具がたいせつだ。できるだけ多く集めて、持ってあがる用意をしろ」
「榊原運転士。君は、井戸をほる道具を、第一にそろえてくれ、シャベル、つるはし、この二つは、ぜひとも必要だ。マッチ、双眼鏡、のこぎり、斧《
前へ
次へ
全212ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング