とから、間隔をおいておしよせる波と、ぶつかり、ごったがえして、三角波となり、たけりくるっている。そこへまた、どっとよせてくる大うねり。すべてが力を合わせて、船をゆすぶるのだ。ことばでいえば、
――おどりくるった波が、船を猛烈に動かす――
――怒濤《どとう》が、船をもみくちゃにする――
まあ、こんなものだが、じっさいはどうして、そんなものじゃない。
ことわっておくが、この大波は、大しけの荒波ではない。天気はおだやかで、風はないが、上下に動くうねり波がおしてきて、暗礁にはげしくうちあたるのだ。
総員は必死になって、予備錨用意の作業にかかっているが、前後左右に、はげしくかたむき動く甲板では、物につかまっていなければ、立ってもいられない。
それに、さきに投げ入れた、右舷と左舷の錨は、船首の左右に一つずつ、いつでも使えるように備えつけてあったのだが、予備の大錨は、船首に近い上甲板に、しっかりしばってあるのだ。どんなに大波がうちこんでも、波にとられぬよう、いくら船が動いても、びくとも動かぬようになっている。もし、この錨が動いたら、甲板に大あなをあけるだろう。
その、予備錨をしばってあ
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