、また「鼻じろ」のじまんをした。そしてみんなも、「鼻じろ」は、たしかにアザラシのなかで、いちばん強い王様であることをみとめた。川口はとくいであった。かれは「鼻じろ」のように胸をそらして、
「強い大将には、強いけらいがあるよ」
 と、いった。すると、水夫長が、
「大将さんははだかで、けらいがりっぱな毛皮の着物を着ているなんて、よっぽど、びんぼうな大将だ」
 といった。それでみんな、手をうって、大笑いに笑いこけた。
 これも、ほがらかな無人島生活の一場面だ。だが、「鼻じろ」がいちばん強いということが、あとで川口に、かなしい思いをさせることになった。

   アザラシの胆《きも》

 さて、遭難して島にあがった当時、十六人は、ひどい下痢をしたが、それもじきによくなって、みんなもとどおりのじょうぶなからだになった。しかし、小川と杉田とは、ひきつづいてよわっていた。
 宝島の草ブドウの実をたべはじめてから、一時は元気になったように見えたが、その後少しもふとらないで、だんだんやせてくる。当人は、おなかぐあいがいいといって、力仕事に手を出してはいるが、どうも、たいぎらしい。とくべつにたくさん草ブドウ
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