この強いアザラシの頭には、かみつかれた大傷のはげがあって、いっそうかれをあらあらしく強そうに見せていた。
このアザラシが、どうしたことか、いつのまにか元気な大男の川口に、すっかりなついてしまった。
川口のやる魚なら、手のひらの上でたべた。川口がなでてやると、喜んで大きなひれのような前足で、川口をばたばたたたいた。川口が、どんなに喜んだかは、はたで見る者が、ほほえまれるほどであった。
かれは、国後にさえなつかなかった、この勇ましい、そして強情なアザラシに、「むこう傷の鼻じろ」という名まえをつけた。それは、頭に大傷のあるこのアザラシは、鼻の上に一ヵ所、一かたまりの白い毛が生えている、めずらしいアザラシであったからだ。
「鼻じろ」は、川口のじまんのもので、まるで、弟のようにかわいがっていた。かれは、ときどき料理当番にたのんで、じぶんのたべる魚の半ぶんを、料理せずに、生のまま残しておいてもらって、「鼻じろ」にたべさせていた。
ある日、夕食後のすもうで、川口が五人ぬきに勝って、みんなから拍手されたとき、「いや、『鼻じろ』にはかなわない。あいつは、二十四頭ぬきだ。アザラシの横網だよ」
と
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