れを、力いっぱい、できるだけ遠く海へ投げると、アザラシどもは、たちまち海へとびこんで、しぶきをあげて、木ぎれに突進する。木ぎれをくわえ取ったアザラシは、とくいそうに、頭を高く水から出して、岸にむかっておよぎ帰る。ほかのアザラシは、はずかしそうに海面すれすれに、顔半ぶんを出して、そのあとにつづくのである。こんなに、われらと野生のアザラシとはなかよしになっていた。
ところが、二十五頭のアザラシ群のなかに、ただ一頭、いつも、ひときわいばって頭をもたげ、りっぱなひげをぴんとさせ、胸をそらしている、雄アザラシがあった。
このアザラシは、けっして人間をあいてにしなかった。
お友だちにならなかった。
国後や範多のような、アザラシならしの名人さえ近づけなかった。
投げてやった魚は、横をむいて、たべようともしない。
そして、
「なんだ、人間くさい魚。へん。おいらの食堂は太平洋だよ」
と、いわぬばかりに、海にはいるとすぐに、大きな魚をつかまえて、口にくわえ、水から頭を高く出して、人間に魚を見せびらかすように、たべるのであった。
そして、ほかのアザラシとよくけんかをして、きっと勝つのだ。
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