のたしかな位置がわかった。
「汝に謝す」
お礼の信号をすると、
「愉快なる航海を祈る」
汽船はこの信号をあげつつ、ゆうゆう帆走する本船をおきざりにして、どんどん遠ざかり、やがて、水平線のあなたに、すがたをかくしてしまった。
こうなると、汽船と帆船とは、うさぎとかめの競走である。かめの本船は、ここで、針路をまっすぐにホノルルに向けた。
二十二日の朝、ホノルル沖についた。信号旗をあげて、港の水先案内人をよび、曳船《ひきぶね》にひかれて、龍睡丸は港内にはいって、碇泊した。
私は上陸して、ホノルル日本領事館にいって、領事に、海難報告書を出して、避難のため、この港へ入港したわけを説明して、べつに英文の海難報告書を、領事の手をへて、ホノルルの役所へとどけてもらった。
世界の海員のお手本
こうして龍睡丸《りゅうすいまる》は、ぶじに避難ができた。しかし、こまったことになった。船の大修繕をしなければならない。錨《いかり》を買い、糧食をつみこまなくてはならない。それだのに、龍睡丸には、準備金がないのだ。
まさか、こんな外国の港で、大修繕をしたり、糧食を買い入れようとは、夢にも思わ
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