十二メートルの高さであるが、すこしほれば清水《しみず》がわきでるから、この島で、まず飲料水をつみこむことを考えた。だが、大西風が強すぎて、とても行けない。しかたがないからあきらめて、ホノルルに向かった。

 それから毎日、龍睡丸は走りつづけて、十一日めの二月四日に、はじめてハワイ諸島の島を見てからは、三、四日めごとには島を見て、島づたいに進んだ。
 なによりも飲料水がほしいので、島の近くにくると漁船をおろして、水をさがしにでかけたが、波が荒くて、島に上陸ができず、また、上陸のできた島には、水がなかった。
 しかし、これらの無人島では、大きな海がめ、背の甲が一メートルぐらいの正覚坊《しょうがくぼう》(アオウミガメ)が手あたりしだいにとらえられ、おまけにその肉は、牛肉よりもおいしく、また、どの島のちかくでも、二メートル以上のふかが、いくらでもつれた。
 こうして、はてもない空と水ばかりを見て、帆走《はんそう》をつづけ、二月もすぎて、三月十五日となった。この日の午後二時、西北の水平線に、一筋たちのぼる黒煙をみとめた。
 汽船だ。
 万国信号旗を用意して、汽船の近づくのをまっていた。それには、
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