、折れた帆柱、ゆるんだ索具の小帆船が、戦わなければならない。遠いけれども、追手の風で、ハワイ諸島のホノルル港に避難して、修繕を完全にして、じゅうぶんの航海準備をととのえて、日本へ帰るのが、いちばんたしかな方法だ。急がばまわれとは、このことだ。
 また、ホノルルに向かえば、途中は島づたいに行ける。まんいち、食糧がなくなっても、魚をつってたべ、島にあがって清水《せいすい》もくめよう。いよいよ水がなくなったら、この島々にたくさんいる、海がめの水を飲もう。海がめは、腹のなかに、一リットルから二リットルぐらいの、清水を持っているのだ。
 この島々の付近には、北東|貿易風《ぼうえきふう》(一年中、きまって北東からふいている風)がふいている。もし、大西風がやんで、反対に北東貿易風がふきだしても、この風になら、さからって船を進めることができる。こう決心して、ホノルルに針路を向けた。
 しかし、できるだけ早く飲料水《いんりょうすい》がほしいので、いちばん近い島、すなわち、ハワイ諸島のミッドウェー島に行こうとした。
 ミッドウェー島は、ホノルル港から、約千カイリ、ハワイ諸島の西端の島で、島は、海面から、約
前へ 次へ
全212ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング