海は荒くなって、交通はできない。それまでに、できるだけたくさんの流木《りゅうぼく》とかめとを、本部島に運んで、冬の支度をしなければならない。
そこで、さしあたって、六人が伝馬船に乗って、宝島に渡ることにする。そして、流木とかめとをつんだ伝馬船は、三人で漕いで帰り、あとの三人は島へ残って、流木を集め、かめをとらえて牧場をつくって、つぎの船を待つ。つぎの船で、本部島から三人が出かけて行き、島の三人と交代して、宝島に残る。宝島には、いつでも三人ずつ残ることにする。
本部島からは、飲料水を石油缶につめて送るが、宝島でも、天幕の屋根から雨水をあつめて、ためておくくふうをすること。宝島での食物は、魚をつってたべることにして、かめは、まんいち魚のとれない時の用意に、いつでも十頭ぐらいは、食用として残しておき、あとのかめは、本部島へ送ること。
また、島をよくしらべて、なんでもめずらしいと思ったもの、発見したものは、どんな小さいことでも、かならず本部島へ報告すること。
伝馬船は、朝早く、まだ暗いうちに出発して、日中の航海をして、夜の航海はしない。けっしてむりをしてはいけない。たとえ出発しても、天気がわるくなったら、すぐとちゅうからひき返して、気長に天気のよくなるのを待つようにすること。
宝島で、いちばんだいじなことは、通る船の見はりである。宝島には、流木がたくさんあるから島に着いたらすぐに、高いやぐらをつくって、そこから、一人はきっと、四方の海を見はること。信号の「たき火」は、宝島にはたきぎがたくさんあるから、すぐできる。あとは、いつでも火種のとれる、万年灯《まんねんとう》をつくればいい。
これらのことを、しっかりときめた。
それから、いよいよ宝島へ行く、水夫長以下をきめた。飲料水を石油缶につめたり、天幕にする帆布、索《つな》、万年灯の油、つり道具、まんいちの用意として、かんづめ十個、マッチの小箱一個をかんづめの空缶に入れ、雨着の布でげんじゅうに包んだものなどをとりそろえて、あすでも天気がよければ、出発できるようにした。
無人島教室
きょうの作業は、きのう宝島から持ってきた、流木のなかの、船底板にはってある、銅板をはがす仕事であった。
うすい銅板を、ていねいに釘《くぎ》をぬいてはぎとり、はがき二枚ぐらいの大きさの銅板を、六枚こしらえた。流木の中の、あつい板
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