はあまえて、はなをならして、気もちよさそうに眠るくらいになった。
ところが、帰化人の範多《はんた》も、前にラッコ船に乗っていたとき、アザラシの子を飼ったことがあって、かれも、こっそり、アザラシと親友になっていた。
ある晩、アザラシ半島で、思いがけなくも、国後と範多とは、ばったり出あった。
「びっくりしたよ。なんだ、国後か」
「わしもおどろいたよ。範多か」
こうして、アザラシならしの名人二人は、アザラシと友だちになった喜びを、ひみつにしておけなかった。二人は、人間の友だちを、一人つれ、二人つれて行っては、アザラシに紹介した。このことを運転士が知ったときは、水夫や漁夫たちは、たいていアザラシの友だちであった。
「アザラシに近よるな」
これは、船長の命令である。結果はよかったにしても、アザラシに近づいたのは、たしかに、命令にそむいたのだ。
「規律をまもれ」
これは、島の精神だ。
「アザラシとなかよしになったことが、とうとう、運転士さんに知れたらしい」
「どうしよう――こまったなあ……」
アザラシの親友の、国後と範多は、ひたいをよせて、ささやきあった。
「あやまろう。それよりはかにしかたがない――」
アザラシならしの代表国後は、おそるおそる運転士の前にでた。かれは、かしこまって、うつむいて、ぼそぼそとつかえながらいった。
「船長の命令にそむいて、アザラシのところへ、いちばんはじめに行ったのは、私です。すまないことをしました――ごめんなさい」
運転士は、国後が、すっかりしおれているすがたに、まっ正直な心が、あふれているのを見た。
「こまったことをしたな。規律はよくまもるんだぞ。こんどのことは、私から船長へ、よくお話ししておこう」
「へい……すみません。お願い申します」
「これからは、気をつけるのだぞ。だが、せっかく友だちになったのだ。アザラシとは、いつまでもなかよくしろよ」
「へえ、ありがとうございます」
国後につづいて、範多も運転士の前にでて、あやまった。
こうして、ひや汗を流してあやまったあと、国後と範多は、はればれした顔色で、毛皮の友だちのいる、アザラシ半島をながめた。
宝島探検
炊事用のたきぎのたくわえが、日ごとに少なくなるのが目立って、たいそう心細くなってきた。使いつくしたらどうしよう。魚の骨や、かめの甲の代用では、とてもまにあわない
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