やす》んじてゐます。
ふと氣がついてみると、私は今|馬鹿《ばか》に固《かた》くなつてこれを書《か》いてゐました。若《も》しや[#「しや」は底本では「のや」]私の言ひ方《かた》があなたを説得《せつとく》するやうな調子になりはしなかつたかと思つて、私は今思はず面《おもて》を赤《あか》らめてゐます。どうぞ、あなたに贈《おく》る手紙《てがみ》にことよせて、私がくづれ易《やす》い自分の努力《どりよく》を誡《いまし》めているものと、失禮《しつれい》をお許《ゆる》し下さい。
くれ/″\もゝう、境遇《きやうぐう》に向《むか》つて不平《ふへい》の呟《つぶや》きを洩《も》らす時は過ぎ去《さ》りました。「私や子供のために、こんなに痩《や》せながら働《はたら》かなければならないのだなんて、恩《おん》にばつかり被《き》せてゐるのよ。」[#「よ。」」は底本では「よ」。」]と仰言つたあなたの美しい寂しい笑顏《ゑがほ》を、私は今思ひ浮《うか》べてゐます。ねえ、私達は潔《いさぎよ》くその恩を被ようではありませんか! さうして愛を豐《ゆた》かに持つことに努《つと》め、それをすべてに捧《さゝ》げることに、決して自分の利
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