たり、またかれこれとむづかしく説明を加へたりしたくありません、それはまた決して出來ない事です。たゞ一年有半私を孤獨にして、すべての愛する者から遠ざけて置く病氣が、そんな風に私を感じ易くしたのだといへば事足ります。あんなにはしやぎやの、却つてあなたを寂しませる位にはしやぎ出すのが常であつた私が、人知れずあなたと私とのためにかくれがを思ひ、寂しいしづかな道を二人のために備へようとしてゐるのを、あなたはお信じになることができますか。もしお信じになつても、それをやはり私の病氣の故に歸して、肉體の元氣の恢復と共に、跡方もなく消えて行く心と御覽になりはしませんか。けれどもそれはさうでないと言つたところで、また或はさうであるかも知れないのですけれど、私は今この現在を餘所にして未來を語りたくはないし、またあなたにも、この現在よりも先に未來を思つて頂きたくはありません。さうして私は今それを信じてゐます、あなたが必ず私のその心に同意を表して下さるだらうといふことを。
覺えてゐらつしやるでせう、あの今年の冬の二月、田舍の病院であなたを待ち切つてゐた私が、あなたの顏を見るとすぐに、あの寒い障子を開けて、しづ
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