女
水野仙子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)依[#「得」の間違いか?353−1]體の知れない
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『女つてもの位、なんだね、僕等に取つて依[#「得」の間違いか?353−1]體の知れないものはないね、利口なんだか馬鹿なんだか、時々正體をつかむに苦しむことがあるよ。さうなるとまるで謎だね……法廷なぞでもなんだよ君、あゝあゝかうと、ちやんと言ひ切つてしまふのは女の證人だよ。男なら、さあはつきり覺がありませんとか、よく分りませんでしたとかいふところを、女は事々明瞭に申したてる、そりや頗る明快なものさ、概してそれは證人の弊だがね、女は殊にさうなんだ。勿論、證言の眞實は保證の限にあらずさ。』
主人の辯護士は、次のやうな話を語り終つてから、かう結論のやうにつけ加へた。
それはこんな話であつた。――
嘗てその辯護士の住んでゐた港の都市から少し離れたところに、戸數一萬ばかりの某の町があつて、そこには聯隊があつた。その聯隊附の中尉――某中尉といふのゝ細君が、ふとしたことから一つの問題を惹き起したのである。
夫の中尉はち
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