くなる。もつれもつれて感情が彈き合つた。
『よしよし、おゝおゝ、なんでもみんなお母さんが惡いんだ、さうしてみんなしてお母さんをいぢめろ、惡者の意地惡はお母さんばかりなんだから……どうせ……どうせ……勝の體のかはりに神樣が連れてつてくれる。一生子供の爲に心配して死ねばいゝんだ……』
母親も泣いた。あべこべにかう怨まれて見ては、お芳はたまらなくなつて、わつとして慌てゝ顏に袖をあてた。
『どうしつぺなあ、私の病氣の爲にみんなが……』
ほろほろと病人の顏から涙が落ちた。
『勝、勝はなんにも心配することはないぞ、なあに、なんでもないことなんだから……體に障るから。』と、母親はまたおろおろした。
宗三郎は十時頃になつて、まつ赤な顏をして歸つて來た。
『お飯は……餅でも燒くかい。』と言つたお芳の腫れた目を見て、『いゝや、喰べなくてもいゝ。』と、義妹には優しく言つて、そのまゝ炬燵にごろりと仰むけになつた。
九
日に日に病人の快くなり目がついた。それにしても體はまだ少しも自由にならなかつたので、絶えず寢がへりをさせて貰ふのに人手がいつた。
病人から涙をこぼされたので、宗三郎も
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