く人の死の絶對な靜肅さの前に、何といふ生きたるものの遊戲はあはれに無意味なものであつたらう!
 四月一日、私は以後この日のあそびを永久に葬らう! それは私にとつてもはや無意義であり、無興味である。もしも今、彼の死兒を抱いて行く兄弟を呼びとめて、
「もしもしあなた! 何もそんなに氣を落しなさるには及ばないぢやありませんか、それは嘘ですよ、笑談《ぜうだん》ですよ、御覽なさい、赤んぼはあなたの懷《ふところ》の中で笑つてるぢやありませんか! あなた、今日は四月一日ですよ!」といふことができないかぎりに於ては!
(大正七年二月「文章世界」)


底本:「現代日本文學全集85『大正小説集』」筑摩書房
   1957(昭和32)年12月20日発行
入力: 小林徹
校正:野口英司
ファイル作成:野口英司
1998年7月9日公開
2001年3月3日修正
青空文庫作成ファイル:
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