うゐん》の醫員《いゐん》になつた。彼《かれ》は所謂《いはゆる》人好《ひとず》きのする男《をとこ》で、殊《こと》に院内《ゐんない》の看護婦達《かんごふたち》をすぐに手《て》なづけてしまうことが出來《でき》た。彼《かれ》は、自《みづか》ら衞《まも》ることに嚴《おごそ》かなもとめ[#「もとめ」に傍点]の孤壘《こるゐ》に姉《あね》に對《たい》する弟《おとうと》のやうな親《した》しさをみせて近《ちか》づいて行《い》つた。彼《かれ》は彼女《かのぢよ》よりも二つばかり年下《としした》なのであつた。いつの間《ま》にかぱつと二人《ふたり》の關係《くわんけい》が噂《うは》さにのぼつた。噂《うは》さが先《さ》きか、或《あるひ》は事實《じじつ》が先《さ》きか――それはとにかく魔《ま》がさしたのだと彼女《かのぢよ》はあとで恥《は》ぢつゝ語《かた》つた――間《ま》もなく彼女《かのぢよ》が二人《ふたり》の子供《こども》と共《とも》に、院内《ゐんない》の一|室《ま》に若《わか》い醫者《いしや》と起《お》き伏《ふ》しゝてゐることは公然《こうぜん》になつた。院長《ゐんちやう》の某《なにがし》が媒《なかだ》ちをしたのだとい
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