も再《ふたゝ》び彼女《かのぢよ》の傷所《きずしよ》――それは羞耻《しうち》や侮辱《ぶじよく》や、怒《いか》りや呪《のろ》ひや、あらゆる厭《いと》はしい強《つよ》い感情《かんじやう》を持《も》たないでは見《み》られぬ――をあらためさせなければ止《や》まなかつた[#「止《や》まなかつた」は底本では「止《や》まなつつた」]。彼女《かのじよ》はその苦痛《くつう》に堪《たへ》られさうもない。けれども黒《くろ》い影《かげ》を翳《かざ》して漂《たゞよ》つて來《く》る不安《ふあん》は、それにも増《ま》して彼女《かのぢよ》を苦《くる》しめるであらう。
町《まち》の小學校《せうがつかう》の校長《かうちやう》をしてゐた彼女《かのぢよ》の夫《をつと》は、一|年間《ねんかん》肺《はい》を病《や》んで、そして二人《ふたり》の子供《こども》を若《わか》い妻《つま》の手許《てもと》に遺《のこ》したまゝ[#「遺《のこ》したまゝ」は底本では「遣《のこ》したまゝ」]死《し》んでいつた。殘《のこ》つたものは彼女《かのぢよ》の重《おも》い責任《せき》と、極《ごく》僅《わづ》かな貯《たくは》へとだけであつた。彼女《かのぢよ》は
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