を覺《おぼ》えた。赤裸々《せきらゝ》に、眞面目《まじめ》に、謙遜《けんそん》に悔《く》ゐることの、悲痛《ひつう》な悲《かな》しみと、しかしながらまた不思議《ふしぎ》な安《やすら》かさとをも併《あは》せて經驗《けいけん》した。彼女《かのぢよ》が今《いま》までの悔《くゐ》は、ともすれば言《い》ひ譯《わけ》の楯《たて》に隱《かく》れて、正面《まとも》な非難《ひなん》を拒《ふせ》いでゐたのを知《し》つた。彼女《かのぢよ》は今《いま》自分《じぶん》の假面《かめん》を引剥《ひきは》ぎ、その醜《みにく》さに驚《おどろ》かなければならなかつた。今《いま》こそ彼女《かのぢよ》は、亡《な》き夫《をつと》の靈《れい》と純潔《じゆんけつ》な子供《こども》の前《まへ》に、たとへ一時《いつとき》でもその魂《たましひ》を汚《けが》した悔《くゐ》の證《あかし》のために、死《し》ぬことが出來《でき》るやうにさへ思《おも》つた。
 天《てん》にでもいゝ、地《ち》にでもいゝ、縋《すが》らうとする心《こゝろ》、祈《いの》らうとする希《ねが》ひが、不純《ふじゆん》な沙《すな》を透《とほ》して清《きよ》くとろ/\と彼女《かのぢよ
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