で厶ります」
「さもあろう。いや、だんだんと話に気が乗って参った。今度は誰じゃ。誰ぞ持合せがあるであろう。語ってみい!」
「…………」
「返事がないな。多々羅はどうじゃ」
「折角乍ら――」
「ないと申すか。永井! そちは如何《どう》じゃ?」
「手前も一向に――」
「不調法者達よ喃。では林田! そちにはあるであろう。どうじゃ。ないか」
「いえ、あの――」
「あるか!」
「はっ。厶りますことは厶りまするが……」
ためらいもよいつつ林田が言いかけたのを、
「言うなっ。門七!」
実に奇怪だった。それまで点々としてしょんぼりうなだれていた千之介が、突如|面《おもて》をあげると、何ごとか恐れるように声をふるわせ乍《なが》らけわしく遮切《さえぎ》った。
「話してはならぬ! やめろっ。やめろっ。あれを喋舌《しゃべ》ってはならぬ! 言うのはやめろっ」
三
「なに! 異《い》なことを申したな。何じゃ! 何じゃ!」
きいて当然のごとくに長国が不審を強め乍ら言い詰《な》じった。
「やめろとは何としたのじゃ! あの話とはどんな話ぞ? 千之介がまたなぜ止めるのじゃ」
「…………」
「の
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