! きょうは、きょうは、と毎日毎日泣き暮して待っていたんです! みなさまも集っておいでなら、よくきいて下さいまし! そればっかりはご免下さい、こらえて下さいと、泣いてわたしがお頼みしたのに、わたしをだまして、威《おど》して、あすは来る、あすは使いをよこして、気まま身ままの寵《おも》いものにしてやるなぞと、小娘のわたしをだましておいて、それを、それを」
「たわけっ。なにを言うのじゃ! 人が集《たか》って来るわっ。放せ! 放せ!」
「いいえ! 死んだとてこの靴は放しませぬ! どうせ嘘とは思いましたけれど、とうとう悲しい目に会いましたゆえ、もしや、もしや、ときょうまで待っておりましたのに、それを、それを、嘘つき! 人でなし! いいえ! いいえ! そればかりではありませぬ。あの人を、新兵衛さままでをも、なんの罪もないのに、あんなむごい目に会わして、お役人に、お牢屋に引っ立てなくともいいではありませぬか! お可哀そうに、あんな負けた人までも、世の中に負けた人まで引っくくって、放しませぬ! ご前さまが、このお雪に詫《わ》びるまでは放しませぬ!」
「馬鹿めがっ。わしが新兵衛のことなぞ知るものか! あ
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