と動きました。
「お見通し! そうなんだ。じ、じつあ、京弥さまから、御前が不意の御呼び出しで御登城なすったお知らせいただいたんで、どうせこりゃ腰本の狒狒侍《ひひざむらい》の小細工、この上どんなたくらみしやがるかと屋敷の前へ張って容子をさぐっていたら、お城の小者が顔色かえて飛びつけて来ると、屋敷の中が急にガタつき出し、狒狒爺め覆面なんぞつけそこにいるガラクタどもをつれてお城の方へ急ぐんだ。あとをつけながら話をぬすみ聞いたら、どうやらお城じゃ御前の言い分が通り、狒狒爺のお蔵に火がついたんでこいつらアやぶれかぶれ、この上は今夜の中に御前を闇から闇へ消してしまってあとはお紋狐の口細工で将軍さまをいいくるめ直そうって悪だくみだ、こいつあ大変、腕はなまくらでもこの人数だ。御前だってお怪我の一つぐらいはなさるかも知んねえ、すこしも早くお屋敷へとすっとんでいったら、有がてえ! 途中で心配して出迎いに来られた菊路さまと京弥さまにバッタリ、三人火の玉になってかけつけて来たんだ。――さあ、狒狒侍ッ」
おぞましや面皮《めんぴ》はがれて白覆面の腰本治右衛門、ピクリとまた後へさがりました。
「チビ狒狒どもも前へ
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