なんしろ御大名、ヘマを踏んで引ッくくられでもしちゃ大変だから、その時はお屋敷へしらせてお殿様にお救い願おうと存じまして、万一の用意にと、床新さん達に用のすみ次第、あちらへ廻って貰ったんでござんす。その遠藤様が仕掛け細工の張本人ですぜ」
「なにッ。そうか! そうであったか! 仕掛け細工とは何をしたのじゃ」
「何うもこうもねえんですよ。太《ふて》え御了簡ッちゃありゃしねえ。どうして探り出そう、誰から嗅ぎ出そうと手蔓《てづる》をたぐって行くうちにね、ゆうべこちらへ御菓子折とかを届けためくらとあの若い野郎とを嗅ぎ当てたんですよ。めくらはお出入り按摩、若い奴も同じお出入りの小間物屋だそうでござんすが、こちらへお伺いしたからには、何もかも話せばいいのに、うっかり申しあげたら、御殿様にバッサリやられそうな気がしたんで、怕い怕いの一心から、ひた隠しに隠してひた逃げに逃げて帰ったんだそうですがね。事の起りゃ御身分甲斐もねえ、みんな遠藤様の横恋慕からなんですよ。三日にあげず通いつめたが、御存じのように誰袖花魁には真夫《まぶ》がある。ぬしと寝ようか五千石取ろうかの段じゃねえんです。万石《まんごく》積んでも肌
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