」
途端でした。爆発するような哄笑が退屈男の口にのぼりました。
「ウッフフフ。わッははは。いや、面白いぞ。面白いぞ。水死人に絞め殺した紐痕《ひもあと》が見ゆるとは、愈々怪談ものじゃ。どうやら話が本筋に這入ったわい。――亭主! 亭主!」
「はッ。六兵衛はここに控えてござります」
「いやそちでない。遊女屋の亭主じゃ。誰袖の抱え主《ぬし》が参り合わせておると申したが、いずれじゃ」
「へえへえ。三ツ屋の亭主ならば手前でござります。いつもながら御健勝に渡らせられまして、廓内《くるわない》の者一統悦ばしき儀にござります。近頃は一向イタチの道で、いや、一向五丁町へお越し遊ばされませぬが何か――」
「つべこべ申すな! ここは曲輪《くるわ》でない。そのように世辞使わなくともよいわ。――相尋ぬることがある。偽り言うては相成らんぞ」
「へえへえ、もうほかならぬ御前様でござりますゆえ、偽りはゆめおろか、毛筋程のお世辞も言わぬがこの亭主の自慢でござります。それにつけても御殿様のお姿が見えぬと、曲輪五丁目は闇でござりますゆえ、折々はあちらの方へもちとその、エヘヘヘ、その何でござります。つまりその――」
「控えぬ
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