そくに人を飛ばし、三ツ扇屋とやらの主人《あるじ》にもお越しを願うたところ、今しがた駈けつけまして打ちしらべましたばかりでござりまするが、やはり似てもつかぬ別人じゃそうにござります」
「のう! ――まことと致さばなにさまいぶかしい。騒ぎのもとと相成ったその伜はいずれじゃ。源七は行方《ゆきがた》知れずにでもなっておるか」
「それが実は心配の種でござります。どうしたことやら、四日程前にぶらりと家を出たきり、行き先も居どころも皆目《かいもく》分りませぬゆえ、もしや不了簡でも起したのではないかと、打ち案じておりましたところへ、人違いの心中者が届きましたゆえ、かように騒ぎが大きくなった次第でござります」
「誰袖もか」
「同じ日の夕方、やはり居のうなっているのじゃそうにござります。そういうお殿様はまた、いったいどうしてここへ?」
「到来物があったからじゃ。行方《ゆきがた》知れずの源七達から菓子折が参ったのよ」
「えッ。ではあの、せ、伜はまだ生きておるのでござりましょうか! どこぞにまだ存生《そんじょう》しておりましょうか!」
「おるかおらぬかそれが謎じゃ。人間二匹居のうなって死体が揚がる、書置の手蹟
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