御存じでごぜえましょうが、ひょっとするとあれじゃねえかと思いましてね。ほら、よくあるこッちゃござんせんか。お城普請《しろぶしん》やお屋敷なんぞを造《こし》らえる時に、秘密の抜け穴や秘密仕掛けの部屋をこっそり造らえて、愈々出来上がってしまうと外への秘密が洩れちゃならねえというんで、工作人夫を生き埋めにしたり、バッサリ首を刎《は》ねたりするってことを聞いておりますんでね。もしやそんなことにでもなっていちゃ大変と、内々探りを入れて見たんです。するてえと――」
「あったか! 何ぞそれらしい証拠があったか!」
「あったどころか、どうも容易ならんことを耳に入れたんですよ。どんな抜け穴を掘ったか知らねえが、仕事が出来上がってしまってから、人夫を並べておいてやっぱり首を刎ね出したんでね、そのうちのひとりが怖くなって逃げ出したと言うんです。しかし逃げられちゃ道場の方でも大変だから、内門弟を六人もあとから追っかけさせて、とうとう首にしたとこう言うんですよ。だから、こちらのお絹さんもすっかり慌てておしまいなすったんです。井戸掘り人夫がそんなことになったとすりゃ、勿論棟梁達も無事で帰ることはむずかしかろうと大
前へ 次へ
全44ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング