ひとり身じゃ。そちさえ色よい返事致さば、どんなにでも可愛がってつかわすぞ。いいや、そちの望みなら何でもきき届けて進ぜるぞ。親御の仕官口もよいところを見つけて、世に出るよう取り計らってつかわすぞ。どうじゃ、言うこときくか」
「それがあの、本当なら倖《しあわせ》でござりますなれど……わたくし、あの只一つ――」
「只一つどうしたと言うのじゃ」
「………」
「黙っていては分らぬ。言うてみい、只一つどうしたと申すのじゃ」
「気になることがあるのでござります」
「どういうことじゃ」
「あの、小さい時、鞍馬《くらま》の修験者《しゅげんじゃ》が参りまして、わたくしの人相をつくづく眺めながら、このように申したのでござります。そなたは行末ふとしたことから、身分の高いお方のお情をうけるやも知れぬが、その節は必ずこの事守らねばならぬ。俗人のままの姿でお情うけたならば、その場で悲しい禍《わざわ》いに会わねばならぬゆえ、ぜひにもお頭《つむり》を丸め、御|法体《ほったい》になって頂いてからお情うけいと、このように申されましたゆえ、それが気になるのでござります」
「馬鹿な! 修験者|風情《ふぜい》の申すことが何の当に
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