ろう喃」
「いえ、あの、浪人者でござります。それも長いこともう世に出る道を失いまして、逼息《ひっそく》しておりますゆえ、よい仕官口が見つかるようにと、二つにはまた、あの――」
「二つにはまたどうしたと言うのじゃ」
「あの、わたくしに、このような不束者《ふつつかもの》のわたくしにでもお目かけ下さるお方がござりますなら、早くその方にめぐり合うよう、日光様へ願懸けに行っておじゃと、母様からのお言いつけでござりましたゆえ、じいやと二人して参ったのでござります」
「ウフフ。うまいぞ。うまいぞ」
 きいて戸の外の退屈男は小さく呟《つぶや》きました。しかし、穏かでないのは京弥です。きき堪えられないように身悶えながら色めき立ったのを、
「大事ない、大事ない。あれが手管ぞよ。手管ぞよ。今暫くじゃ、辛抱せい」
 小声で叱りながら、なおじッと聞耳立てました。それとも知らずに十郎次は、菊路の巧みな誘いの一手に汚情を釣り出されたとみえて、ますます色好みらしい面目をさらけ出しました。
「聟探しの日光|詣《もう》でとはきくだに憎い旅よ喃。もしも目をかけてとらす男があったら何とする」
「ござりましたら――」
「ござり
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